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先日のテレビ、「真珠湾攻撃」で戦死した恋人の「跡」を訪ねるご老人を取り上げたドキュメンタリー番組を見た。
パールハーバーで日本軍に撃沈された戦艦アリゾナの上に立つ記念館。そこに納められた戦没者名入りの軍帽ケースを寄付した人がその女性だ。その女性を探し当て尋ねるところから始まる。
恋人は20歳を超えたばかりでゼロ戦に乗り真珠湾攻撃に参加した。ハワイオアフ島上空で高射砲の直撃を受け墜落死亡した。この男性の遺骨は帰ってくることはなかったが女性は「自分の夫はこの男」と心に決め戦後を必死で生きることになる。
テレビ局が訪問した時、彼女は「アメリカ人が憎い」と語った。
局の勧めで彼女はハワイに渡り、恋人の「跡」をたどることになる。
墜落した戦闘機の残骸がそのまま残る。その一機から機体番号が判明し、恋人の愛機だったことが判り彼女は涙する。
アリゾナ記念館にはたくさんの退役軍人が来ていて、彼女に話しかける。中にはあの日高射砲部隊の兵士だった人もおり、「あなたが彼を撃ったの?殺したの?」と問う。目から憎しみは消えていない。
やがて、記念館の展示物を見学して息をのむ。そこには日本軍の奇襲にやられた米軍兵士の無数の遺体の写真もあった。彼女の顔に変化が現れた。そして、日系三世の現地人がこれまでの研究をもとに恋人が撃墜された現地を探し出して彼女を案内した。
彼女はしばしの涙の後、何もない原生林何処かにあるままの遺骨に向かい現地人が用意した線香と花束を投げこう語りかけた。「○○さん、あなたは幸せ者です。皆さんからこんなにも良くしていただいて」「戦争は敵も味方も悲しむ。戦争はいけない。絶対いけない」と。
その眼から憎しみの色が消え、深い悲しみがのぞいた。
テレビ局の最後は「これでこの人の戦後は終わった」だった。
佳作だったがこの結論が喉仏に引っ掛かった。戦争の傷跡は何代にもわたって続く。戦争に終わりはない。だから始めてはいけないのだ。
2010.12 M・I
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